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インターフェックスWeek東京2026レポート【後編】 STiVと品質デザイナー for GxPの連携が示すAXの実装

#TAIYO NEWS plus2026.07.13
インターフェックスWeek東京2026レポート【後編】  STiVと品質デザイナー for GxPの連携が示すAXの実装

 GMPをはじめとするGxP対応の高度化が求められる医薬品業界では、逸脱、CAPA、変更管理、苦情管理など、膨大な品質管理データが日々蓄積されている。品質不正やGMP違反が社会問題として顕在化する中、品質管理システムにおけるデータインテグリティ(データの完全性・一貫性・正確性)の確保は、ますます重要性を増している。

 一方、医薬品業界のDXにおいては、正しく記録されたデータをいかに“活用”していくかが問われ始めている。そこに新たな可能性を示そうとしているのが、法人向け生成AIプラットフォーム『STiV』だ。インターフェックスWeek東京2026では、株式会社ユニオンシンクの『品質デザイナー for GxP』との連携も発表され、STiVは新たなフェーズを迎えている。【後編】ではプロジェクトを牽引してきたファンリードSTiV事業部の部長を務める小宮山 靖裕さんに、その先に描く世界観について聞く。

▼前編をまだご覧になっていない方は、こちらからお読みください。
インターフェックスWeek東京2026レポート【前編】 製薬データを“使える知識”へ導くAX新潮流 | TAIYO Global Post

生成AIは“試す”段階から、業務データとつないで“使う”段階へ


 「生成AIは本当の意味で業務に活かす段階に入っています。鍵になるのは、AIそのものの賢さだけではありません。製薬現場に蓄積された“本当に使えるデータ”と、使用者の課題をどう安全につなぐかです。」そう語るのは、ファンリード STiV事業部の部長としてSTiVの開発を牽引し、太陽ホールディングス 情報システム部 新規事業開発課の課長も兼ねる小宮山さんだ。今回、インターフェックスWeek東京2026に合わせて発表されたSTiVと品質デザイナー for GxPの連携は、まさにこの課題意識から生まれた取り組みであり、STiVが志向するバーティカルAI への重要な一歩といえる。

 STiVは、太陽ホールディングスグループの医療・医薬品事業における薬事業務の課題解決を出発点に、同グループのICT事業を担う子会社ファンリードが開発を進めてきた。当初は、法令やガイドラインなど外部情報の参照からスタートし、GMP管理や薬事申請に関わる膨大な文書を生成AIで的確かつスピーディに検索する仕組みを構築した。しかし、製薬業務で本当に価値を発揮するには、外部情報だけでは足りない。社内文書や品質管理システムに蓄積されたデータを安全に連携できることが不可欠となる。そこでSTiVは、SharePointやBoxなどの情報共有ツールに蓄積された文書をRAGで参照し、内部専門文献と省令などの外部専門文献を組み合わせて、根拠に裏付けられた回答を導き出す方向へ進化してきた。 

〈ファンリード STiV事業部 部長 小宮山 靖裕〉

 その延長線上に浮上したのが、ユニオンシンクが提供する品質デザイナー for GxPとの連携である。同製品は、医薬品・医療機器業界向けに特化した品質管理システムとして200社以上の導入実績を持つ。ユニオンシンク営業本部 西日本エリアマネージャーの佐藤裕保氏は、今回の連携発表について次のように期待を込めた。「当社のユーザー会でもSTiVとの連携を望む声が上がっていました。現状はパイロット版を3社でトライアル運用させていただいているところですが、上々の評価をいただいています。当社としても、新たな領域でユーザー企業へのご支援ができるようになり、ビジネスの広がりを実感しています。」生成AIプラットフォームという“頭脳”と、GxP領域で蓄積された信頼性の高い品質管理データをつなぐことで、医薬品業界のデジタル活用は新たな段階を迎えているようだ。

〈ユニオンシンク 営業本部 西日本エリアマネージャー 佐藤 裕保氏〉

品質管理データを“記録”から“活用”へ導く連携の意義

 
 品質デザイナー for GxPは、逸脱、CAPA、変更管理、苦情管理などの品質管理イベントを、GxPの文脈で正確に記録・蓄積・管理するための仕組みである。SharePointやBoxが汎用的な情報の置き場だとすれば、品質デザイナーはワークフローや電子帳票を含め、GxP対応業務の経緯、判断、承認、結果を管理する業務プロセスの記録基盤といえる。

 一方のSTiVは、文書や記録を横断検索し、生成AIで要約・整理・文書化することで、蓄積されたデータを現場で使える知識へ転換するレイヤーである。つまり、STiV×品質デザイナー for GxPの連携は、GxP対応のために正しく記録されてきた品質管理データをAIで活用するバーティカルAIへの一歩と位置付けることができる。

 では、STiVと品質デザイナー for GxPの連携で何が変わるのか。たとえばGxP対応業務では、「過去に似た逸脱はあったか」「その時、どのようなCAPAを行ったか」「今回の変更と似た案件はないか」といった確認が求められる場面が少なくない。しかし、それらを調べるには、記録の所在や検索キーワード、業務上の意味を理解している必要がある。品質デザイナー for GxPは品質情報を正しく記録・管理することに強みを持つ一方、蓄積されたデータを日常業務の判断や文書作成に二次活用するにはハードルがあった。担当者側に高い業務理解と検索スキルが求められるからだ。

 そこに品質管理データを横断的に検索し、生成AIで要約・整理・文書化することを得意とする、STiVの強みが重なる。今回の連携は、ベテランの暗黙知や担当者個人の検索スキルに依存していた品質管理業務を、組織全体で再利用可能な“ナレッジ”へ変える可能性を秘めている。品質管理データを、監査・査察のために“残すもの”から、現場判断を支える“使える知識”へ転換する取り組みである。


次なる実装へ。AXで切り拓く次世代GxP業務のマイルストーン

 
 STiVと品質デザイナー for GxPの連携は、品質管理データの二次活用にとどまらない。信頼できるGxPデータにAIがアクセスし、過去事例を探し、必要な情報を要約し、文書作成を支援できるようになることは、AIエージェントが品質業務を段階的に支援するための布石でもある。「業務のあり方を大きく変えると期待されるAIエージェントですが、一足飛びに、あらゆる業務を自律的にこなす万能型AIエージェントが登場するわけではありません。医薬品業界では、GxP対応、逸脱管理、CAPA、変更管理、SOP改訂、教育記録といった専門業務ごとに役割を明確に定義されたAIエージェントが生まれ、それらが適切なオーケストレーションの下で連携し合う形が現実解になると考え、STiVへの実装を構想中です。」(前出・小宮山さん)

 例えば、法令や通知を自動収集し、影響を受けるSOPや関連文書を探し、担当者へ振り分け、変更案の草稿を作成する。こうした一連の作業は、1つの万能AIが担うというより、専門タスクを持つ複数のAIエージェントが連携することで実現に近づく。その際に重要になるのは、参照すべきデータが信頼できること、役割が明確に定義されていること、そして人が判断・承認できる形で根拠が示されることだ。

 当然ながら、医薬品業界において最終判断や承認を担うのは人である。しかし、調査・検索・比較・草稿作成といった前工程をAIが支援できれば、品質保証・薬事業務の生産性と再現性は格段に高まる。STiVと品質デザイナー for GxPの連携は、その未来に向けた実装において確かなマイルストーンを示したといえる。


AXを現場に根づかせる、伴走とリードの力

 
 厳格なGxP対応が求められる医薬品業界にとって、今回のSTiVと品質デザイナー for GxPの連携は、単なる機能統合にとどまらない。品質管理データを“正しく記録する”段階から、AIによって“現場で使える知識”へ変えていく取り組みであり、医薬品業界におけるAXの実装が、重要な局面に入ったことを示している。

 「STiVにおけるAXへの挑戦では、属人化しがちな前工程をAIで高度に支援するフェーズから、プロフェッショナルが時間とエネルギーをより本質的な“判断”に集中できる環境を創出していきたいと考えています。」(前出・小宮山さん)そのために不可欠となるのが、現場の根底にある課題やニーズに真摯に向き合い、AI活用を実務に定着させる支援である。ファンリードではこれまでも、STiV導入企業に対して伴走型の支援を行ってきたが、今後はさらに顧客の業務変革をリードする支援が求められると考えている。その鍵として注目しているのが、AI時代の新しい技術者像である「FDE(Forward Deployed Engineer)」だ。

 FDEとは、顧客企業の現場に深く入り込み、課題の把握から要件定義、業務フローの設計、AIプロダクトの実装・定着までを担うエンジニアを指す。顧客が目指す業務の“在るべき姿”に合わせて、最短距離でAI活用を形にしていく存在であり、米国の先進的なAI企業などでは、実装を担うキとーパーソンとして位置付けられている。「業務システムに格納されているデータ(社内ナレッジ)をAIと連携させるには、それを前提に構築されていない様々な業務システム内データを”AIが活用可能なデータ”へ変換し、お客様環境下での業務改善を見える形にするFDEが欠かせない存在です。道半ばではありますが、そういった人材の育成に注力し、コンサルティングの質を高めていこうとしています。」(前出・小宮山さん)

 顧客とともに泥臭く課題に向き合う伴走の姿勢と、技術力で次世代の業務モデルへ導く“リード”の力。この両輪によって生まれるベストプラクティスは、慎重さが求められる医薬品業界におけるAXの現実解となり、新たな業界スタンダードとなる可能性を秘めている。


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