2026年6月4日~6日、東京ビッグサイトで電子機器ソリューション展「JPCA Show 2026(第55回国際電子回路産業展)」が開催された。かつてPCB(プリント基板)中心だった展示会は、半導体・実装・電子機器までを扱う総合展示会へと進化し、AI、EV、高速通信時代を支える最先端技術が集まる、未来の産業変化を先取りする活気あふれる場となっていた。
そこで見えてきたのは、AI時代に求められるチップ性能の競争から“つなぐ技術を磨く競争”への大転換だ。その変化の最前線で、太陽ホールディングスの中核事業であるエレクトロニクス分野を担う太陽インキ製造は、どのような未来を提示したのか。JPCA Show 2026の展示を手がかりに、その挑戦に迫る。
“つなぐ”技術が牽引するエレクトロニクス産業の新潮流
JPCA Show 2026のトレンドは、まさにAI時代の未来を志向していた。そのことを物語っているのが、会場のあらゆる場所で繰り返し訴求されていた「高集積化」「高速伝送」「高放熱」「高信頼性」「耐熱性」といったキーワードである。これらは決して新しい言葉ではない。しかし、生成AIの劇的な進化・普及に伴い、その意味合いは大きく変化している。より膨大なデータを高速かつ低消費電力で処理するAIデータセンター、そして自動運転の実用化が現実味を帯びる中で進化し続けるEVや車載半導体。方法論や技術基盤は異なっていても、各社が電子機器の直面する課題に対する解決策を提示していたことが、今回のJPCA Showの大きなうねりとなっていた。
実際に会場で注目を集めていたのは、先端パッケージ、高速通信基板、パワー半導体などを支える実装技術だった。実装技術とは、半導体や電子部品を基板上に搭載し、電気的・機械的に機能させるための技術である。ただし、その焦点は半導体のチップ性能そのものから、「つなぐ技術」へと広がっていた。チップとチップ、チップと基板、基板と電子機器。データ量や電力密度が飛躍的に増大する中で、接続部分の性能こそがシステム全体の性能や信頼性を左右する時代を迎えているようだ。
その競争を支える存在として、存在感を高めていたのが基板材料である。「信号損失を抑える」「熱を逃がす」「絶縁する」「微細な構造を形成する」「生産効率を高める」といった課題を解決する上で、基板材料の進化が大前提となるからだ。これまで完成品の陰に隠れがちだった材料技術こそが、AI時代のエレクトロニクス産業を支える重要な基盤になりつつある。JPCA Show 2026は、その変容を象徴する展示会となった。
未来の創造に向けて、存在感を増す材料メーカーの“つなぐ力“
生成AIの急速な進化を象徴するGPU、自動運転の実現を支える車載半導体。AI時代を語る際に、私たちの目はどうしても最先端の半導体チップに向きがちだ。しかし、未来を見据えた時、それだけでは十分とはいえない。画期的な高性能チップを生み出し、その性能を最大限に引き出し、安定して動作させるためには、それを支えるさまざまな技術が必要になるからだ。
エレクトロニクス業界では“良い材料がなければ、良い半導体は作れない”と言われてい る。つまり、イノベーションの創出には、それを支える基板や実装技術、そして材料の存在が欠かせないということだ。
AI時代を迎えたいま、この言葉の意味は以前にも増して重みを帯びている。AI時代に求められるスペックを満足させるには、いかに突出した技術力を有していても、一社単独では限界があるからだ。その鍵を握るのが、バリューチェーンの再編成である。材料メーカー、PCB※1メーカー、OSAT※2(実装メーカー)、そして最終製品メーカーなどが企業の垣根を越えて価値を共創するパートナーエコシステムの構築への動きが顕著になっている。
協業を表す言葉としてはアライアンスが一般的だ。しかし近年注目されているパートナーエコシステムは、個別企業間の提携にとどまらず、バリューチェーン全体で課題解決を目指すネットワーク型の連携を意味している。
その中で太陽インキ製造は、電子材料を提供する素材メーカーとして、エレクトロニクス産業の価値創造を支えるキープレーヤーの一角を担っている。世界トップクラスのシェアを持つソルダーレジストをはじめ、絶縁、保護、微細加工などの材料技術を通じて、見えないところからエレクトロニクスの進化を支えているのである。
※1PCB 「Printed Circuit Board」の略称。電子部品を搭載し、それらを電気的に接続するための絶縁体の板状部品。
※2OSAT 「Outsourced Semiconductor Assembly and Test」の略称。半導体後工程を受託する企業群を指す。本稿では、PCBメーカーと最終製品メーカーの間に位置するプレイヤーとして、「実装メーカー」と表記する。
5つのソリューションで示した、太陽インキ製造の次代への回答
太陽インキ製造のブースは、黒を基調にコーポレートカラーの緑をアクセントとしたデザインで、来場者の目を引いていた。「材料の力で未来を拓く」という姿勢は展示構成にも表れ、「車載向け」「パワー半導体向け」「高集積分野向け」「導電性材料」「ディスプレイ向け」の5つのソリューションでブースを構成し、エレクトロニクス産業が直面する課題への回答を示していた。
その原点となっているのが、太陽インキ製造の主力製品であるソルダーレジストだ。ソルダーレジストとは、プリント基板の回路を絶縁・保護し、微細な回路形成を可能にする機能性インキ(塗料)材料である。半導体や電子部品の性能を安定して引き出すためには欠かせない存在となっている。特にこの分野のリーディングカンパニーである太陽インキ製造は、その高い技術力により、他社にはない存在感を放っている。
ブースで展示された5つのソリューションの共通項は、この“インキ技術”の延長線上にある。車載向けでは小型軽量化・高温環境対応・高絶縁性・高クラック耐性・熱可塑性など、EV化や自動運転の進展に伴い求められている車載パッケージ基板のニーズに適応する解決策を提示。パワー半導体向けでは、重要テーマとなっている「高放熱性」と「高耐圧化」への新たな可能性を示した。電力の大容量化と省エネルギー化を支えるバックボーンとしての期待も大きい。
また、AIサーバーや高速通信の進化・普及に伴い、より高速で大容量のデータ伝送を支える材料技術への期待が高まる高集積分野向けでは、そのベストアンサーとなり得る熱硬化型絶縁材料や高速通信向け材料、薄型基板向け材料などを展示。さらに導電性材料やディスプレイ分野においては、「回路を形成する」「光を制御する」「柔軟な基材に機能を持たせる」といった観点から、“インキ技術”の可能性を訴求していた。

挑戦は「次世代高速通信基板向け穴埋めインキ」という、“穴”の技術へと続く
太陽インキ製造の存在感をさらに印象づけたのが、JPCAアワード奨励賞の受賞である。同アワードは、学術界、電子回路業界、専門誌編集者、有識者で構成されるJPCA賞選考委員会が「独創性」「発展性・将来性」「信頼性」「適合性」の4つの観点から審査を行い毎年JPCA Showに合わせて選定しており、太陽インキ製造の技術・製品もこれまでも継続的に評価されている。
今回、受賞したのは『次世代高速通信基板向け穴埋めインキ』。その名だけを聞くと、基板の穴を埋めるための材料にすぎないように思えるかもしれない。しかし、AIサーバーや高速通信機器では、基板内を走る信号の品質がシステム全体の性能を左右する。だからこそ、この“穴の中”をどう設計するかが、AI時代のエレクトロニクスを支える重要な鍵を握っている。
なぜ、穴埋めインキが高速通信の未来を変えるのか。【後編】では、この技術の開発背景から性能、産業へのインパクトまで徹底解剖する。
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