前編では、太陽ホールディングスがエレクトロニクス、医療・医薬品、ICT&S(Sustainability)の3事業を軸に、長期的な企業価値をどう高めようとしているのかを聞いた。強みを堅持するだけでなく、顧客の先にある変化を捉え、自ら市場を創造していく。その挑戦の先にあるのが、経営理念に掲げる「楽しい社会」の実現だ。
では、実際にそのような未来をつくっていく上で、齋藤社長が太陽ホールディングスグループのメンバー一人ひとりに望むことは何か。後編では、長期経営構想「Beyond Imagination 2030」の重要なキーワードの1つである“自律型人材”とはどのような人材なのか、そのリアルな行動像と、挑戦を加速させるための組織づくりについて、具体的に紐解いていく。
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【インタビュー前編】変化を恐れず、市場を創る。 齋藤社長が語る、次世代に引き継ぐ企業価値| TAIYO Global Post

変化を前向きに楽しむ自律型人材に求められるリアルな行動像
―― 2021年6月に発表された2031年3月期までの長期経営構想「Beyond Imagination 2030」には、7つの基本方針が示されています。そのキーワードの1つである「自律型人材」について、齋藤社長のイメージをお聞かせください。
「自律型人材」は、太陽ホールディングスグループの「価値創造モデル」議論を重ねる中で生まれた言葉ですが、私はなによりも「変化を前向きに楽しめる人」だと考えています。市場やビジネス環境が変化すれば、会社も常に変化していきます。当然、不安や困難を感じることもあると思いますが、むしろその変化を自分の成長や挑戦の機会として捉えることができる、変化に振り回されるのではなく力に変えていく。そうした、骨太で筋肉質な人材です。
そのためには、自分で考え、周囲を巻き込みながら行動できることが大事になります。正解はあらかじめ用意されているわけではありませんし、変化の激しい環境ではなおさら難しくなっています。だからこそ、自分なりに問いを立て、どうすればより良くできるのかを考え、必要な人を巻き込みながら動く。そうした自発的な行動が、自律型人材の出発点だと考えています。
―― 自律型人材は、「楽しむ」「誠実」「スピード」「コミュニケーション」という太陽バリュー※1とも深くつながっているわけですね。
その通りです。「楽しむ」というのは、単に楽(らく)をするという意味ではありません。難しい変化や課題に向き合う時にも、そこに前向きな意味を見出し、挑戦そのものを楽しむことです。そのためには「誠実さ」も欠かせません。お客様や仲間と真摯に向き合い、約束のために全力を尽くす。その土台があってこそ、周囲から信頼され、挑戦が応援されるのです。
当然、激動の時代には「スピード」が鍵を握ります。完璧な答えを求めて待つだけではなく、まず動き、学び、修正していく。さらに、それを一人で抱え込むのではなく、周囲と対話しながら進める「コミュニケーション」が必要になります。
つまり、太陽ホールディングスにおける自律型人材とは、特別な一部の人だけを指す言葉ではありません。日々の仕事の中で変化を前向きに受け止め、自分で考え、誠実に動き、仲間と対話しながら挑戦を前に進めていく存在です。そして、人を育てるには、会社も変わらなくてはなりません。その一環として、私たちは「仕事のやりがい」「公正な評価・給与」「職場環境」の充実に注力しています。
※1太陽バリュー 太陽ホールディングスグループが定めた共通の価値観。2021年10月に制定され、グループの経営理念を実現するために、社員一人ひとりが大切にする行動指針として位置づけられている。
自律型人材へグローバルとは、異なる価値観の中で力を発揮すること
―― 先程、グループ共通の価値観となる4つの「太陽バリュー」の話がありましたが、社内に浸透してきているとお考えですか。また、自律型人材の行動として、どのように結びついていけばいいのでしょうか。
4つのバリューは、日々の仕事の中で判断や行動の軸になるものだと位置付けています。浸透が進み、日々の行動に定着しつつあるフェーズではないでしょうか。
そもそも太陽ホールディングスグループのメンバーは、仕事に対して素直に向き合う真面目な人が多い。それだけに、直面する課題や変化に対して真摯に向き合い、スピード感を持って技術課題やQCD※2に対応するという点では、すでに積み重ねができています。現在を起点とするフォアキャスティングのアプローチですね。
ここに将来の市場や技術がどう変わるのかをイメージして、そこから逆算して考え、行動を起こすトライを、さらに加えていってほしい。未来を描き、自ら動くのが「楽しむ」、将来に誇れる判断をするのが「誠実」、先駆けとなるのが「スピード」、それを「コミュニケーション」を通じて昇華させていく。このように現在視点と将来視点を両立させることができるのが、自律型人材だと考えています。
※2 QCD Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)
―― 「グローバル」であることも、太陽ホールディングスの特色の1つです。海外経験が長い齋藤社長が考える「グローバル」とはどういう世界なのでしょうか。
グローバルを推し進めていくには、もちろん言語や多文化への理解が重要になります。実はそれ以上に大切なのが、異なる考え方や価値観に触れた際に、それを前向きに受け止め、自分自身を成長させる糧にすることです。
太陽ホールディングスでは、エレクトロニクスはもちろんのこと、医療・医薬品、ICT&Sでもグローバルを前提にしています。ここでいうグローバルとは、単に海外拠点を機能させることではありません。異なる事業、異なる専門性、異なる文化・価値観を乗り越えて、「横断的」にチャレンジしていくことです。このような場面や機会は、これからさらに増えていきます。
その時に必要なのは、自分のやり方だけに固執せずに楽しむこと。相手の考えを誠実に受け止め、対話しながら違いを理解し、スピード感を持ってより良い答えを探していく。つまり、私が考えるグローバルとは、単に海外で働くことではなく、多様な環境の中で自ら成長し、周囲とともに成果を出していくことです。ここでも太陽バリューを存分に発揮してもらいたいと思います。
失敗を恐れず、挑戦の経験を次の成長に変える
―― 自律型人材には、自ら考え、まず動いてみる姿勢が求められます。一方で、新しい挑戦には不確実性がつきものです。そこはどうやって乗り越えていけばいいですか。
大切なのは、失敗を恐れずに挑戦し続けることだと思います。私は社長講話や、社員との懇親会などを通じて、常々「もっと失敗しなさい」「挑戦しなさい」というメッセージを発信しています。
もちろん、後先を考えずに挑戦すればいいというわけではありません。明確な目標と、十分な構想や計画があってこそ、本当の挑戦だと考えています。その結果、自分が描いていた通りにいかないことの方が多いかもしれません。それでも、準備とプロセスに基づいた挑戦であれば、それは次につながる貴重な経験になります。
特に若いうちは、失敗から学べることがたくさんあります。海外で自分の意思をうまく伝えられずに大変な思いをした、新しい仕事で成果が出せずに悔しい思いをした。そうした経験は誰にでもあるはずです。でも、それは必ず自分の財産になります。大切なのは失敗を避けることではなく、失敗から学び、やり方を調整しながら、次の挑戦に活かしていくことです。
正解が見えにくい時代だからこそ、挑戦しなければ新しい答えは見つかりません。自律型人材とは、失敗しない人ではなく、失敗を恐れずに動き、学び続けられる人。その中で明確な目標を定め、大きな志を持って挑戦できる人だと考えています。切に期待しています。
―― 社員が失敗を恐れず挑戦するためには、組織の側にも変化が求められます。会社として、どのような環境づくりを進めていますか。
自律型人材を育てるには、社員だけでなく会社も変わらなければなりません。そのため当社では、社員一人ひとりの挑戦心をかき立てるやりがいある仕事を生み出すとともに、挑戦した人を正当に評価する仕組みや、安心して意見を交わし主体的に行動できる環境づくりを進めています。その中でも、特に重要な役割を担うのがマネジャーです。昨年からは「マネジメント力向上」をテーマに、各組織の状況に応じ現場マネジャーが主導する人事施策をスタートさせました。人事部門はツールや学習機会を提供してマネジャーを支援しています。
これまでは、トップダウンで指示を出し、管理・統制するリーダーが求められる場面もありました。しかし、変化が激しく先行きが見通しにくい今の時代には、自律型組織にふさわしいリーダーシップが必要です。これからのリーダーには、メンバー一人ひとりの意見に耳を傾け、対話を通じて自律と成長を促し、多様な個性や価値観を活かしてチームのパフォーマンスを最大化する役割が求められます。
当社ではその実現に向け、「業務推進」「人材育成」「職場環境整備」をマネジメントの三本柱と位置づけ、エンゲージメント向上と組織力強化に取り組んでいます。自律型人材は自然には育ちません。社員が自ら考え、挑戦し、成長し続けられるよう、上司や組織が意識して環境をつくることが重要です。
また、挑戦する会社であり続けるには、挑戦を正当に評価する仕組みも欠かせません。私たちは結果だけでなく、「何に挑戦したのか」「何を学んだのか」「次にどう活かそうとしているのか」といったプロセスにも目を向けています。失敗を学びに変え、その経験を次の成長につなげることこそが、個人と組織の成長を生み出す原動力になると考えているからです。
マネジャーが対話を通じてチームの力を引き出し、会社が挑戦そのものを後押しし評価する。そうした環境があってこそ、自律型人材は能力を最大限に発揮できます。私たちはこれからも、マネジャーを中心とした組織づくりを通じて、自律型人材あふれる組織の実現に挑み続けます。
2030年の太陽ホールディングスをつくるのは、一人ひとりの挑戦
―― 事業環境が大きく変化する今、太陽ホールディングスグループで働くことには、どのような意味や魅力があるとお考えですか。
太陽ホールディングスグループの経営理念には、「あらゆる技術を高め、革新的な製品をもって、夢あるさまざまなモノをグローバルに生み出し、楽しい社会を実現します」とあります。私は、この言葉の中に、これからの太陽ホールディングスで働く面白さが詰まっていると思っています。
ここでいう「あらゆる技術」とは、研究開発や製造技術だけを指すものではありません。品質を守る力、顧客の声を捉える力、事業をつくる力、デジタルで仕組みを変える力、異なる人や組織をつなぐ力。そうした一人ひとりの専門性や経験のすべてが、太陽ホールディングスグループにとっての技術であり、それを融合させながら未来をつくるということです。
私たちは今、エレクトロニクス、医療・医薬品、ICT&S、そしてさらに新しい事業領域へと、成長のフィールドを拡げようとしています。AIや半導体の進化を支える材料、健康で安心な暮らしに欠かせない医薬品、社会や企業を変えていくデジタルやサステナビリティの取り組みは、いずれも人や社会のWell-beingに関わる大きな可能性を持つ領域です。変化の大きい時代だからこそ、こうした領域を組み合わせながら、これまでの延長線上にはなかった世界をつくり出していくことができます。その挑戦の真っただ中に身を置けることこそが、太陽ホールディングスグループで働くことの大きな意義であり、面白さだと考えています。

●プロフィール
齋藤 斉
1965年、東京都出身。1996年に太陽インキ製造株式会社(現 太陽ホールディングス株式会社)に入社。海外営業部長としてグローバル展開をけん引し、その後は海外子会社の代表を歴任。2016年に取締役に就任し、2022年には代表取締役副社長及びエレクトロニクスカンパニーCEOとして経営の中枢を担う。2025年より代表取締役社長に就任。
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